寺院の広報代行をする会社、株式会社唯の池谷です。
法務・檀務で忙しいお寺が広報活動をするのって、何をどうやればいいのかわかりにくいですよね?
いま、ホームページを持つお寺が増えてきたので、ほかのお寺がどんな広報をやっているのか見えるようにはなってきました。
ただ、広報活動をしているお寺はすべて住職がやっていると思う方も多いと思いますが、すべてがそうではありません。
事実、お墓のチラシなどは石材店が制作し、配布しているケースが多いです。
私が執筆しているお墓のユーザーレビューでは客観的な視点でお寺のことを伝えていますが、当社はそれを届ける広報活動のひとつとして「営業代行」を実施しています。
お寺の営業代行とは何なのかをお伝えします。
広報と営業は面倒なことではない。
そもそも、広報と営業は別物ですが、お寺を知ってもらった人にサービスを提供するという点で、ここではワンセットにしてお伝えします。
人がお寺に求める内容は葬儀や墓地分譲などがあり、今回はお墓を知ってもらって墓地を分譲する営業を例に紹介します。
やったことがない人には営業=面倒と思うかも知れませんが、墓地を見学しに来てくれた人へお墓の案内をするのに面倒くさいと思う住職はいないと思います。
おそらくイメージするのが難しいのは「人に来寺してもらう(集客)」をどうするかという点で、ここを代わりにしてもらうことができないかを考えます。
昔は石材店さんがお墓の案内を代わりにやってくれた。
これまでお墓の集客は石材店さんが墓案内のチラシを使って紹介してくれていました。しかし、私営霊園やビル型納骨堂も増えたので、お墓を求める人には選択肢が増えている現状です。
これまでは墓案内のチラシを石材店が作成し来店客にお勧めすればお墓を買ってくれた時代です。
しかし、情報の透明性が進んだため、いろんな情報を調べてからお墓を見学する人が増えてきました。
ではお墓を探す人はどこでどんな情報を調べているのでしょうか。
「石材店がやってくれたこと」にできる墓案内とは?
寺院ホームページでお墓の案内をしているお寺も多いかと思います。しかし、あまり反応がなかったと思う住職が多いのではないでしょうか?
お墓を探す人が地域名とお墓などのキーワードで検索しても、いろんな墓地が検索されてどの墓地ページをクリックするかもわかりません。
そもそも、お寺が発信する情報は墓案内だけではないので、お墓を探す人が寺院ホームページのなかのお墓のページまで行き着くのも難しい。
そこで、お墓の情報を発信する「墓メディア」が出来ました。
インターネットでお墓の情報を取り扱うサイトですが、地域名とお墓で検索すると墓メディアが上位検索され、お墓を比較して選びたい人が地域のお墓を一覧できる仕様になっています。
墓メディアも数多くありますが代表的なのは「いいお墓」というサイトで、鎌倉新書という会社が運営しています。もともと、仏壇業界向けの専門雑誌社でしたが、仏壇探しやお墓探しの情報を一般人向けに紹介して東証一部に上場した一流企業です。
お墓の情報が集まる大きなポータルサイトなので、ここにお寺の思いを伝え紹介してもらうのが手段のひとつになります。
インターネットで墓案内をすると、
『◯◯寺さん、お墓の宣伝をやってるよね』
といろんな方から揶揄されることも考えられます。
しかし、こちらはそもそも業界サイトとして石材店が登録するためのもの。「◯◯寺墓苑」と紹介されても石材店が登録しているケースが多いので、ネットで見かけても「石材店さんが代わりにやってくれている」と言えます。
公営墓地でさえ複数の石材店さんが登録されているので、誰が登録・宣伝している墓地か誰からもわからない仕様になっています。
寺院名でネット検索するとお寺の記事が数多く紹介してくれているのと同じく、墓メディアはお寺の代わりに墓地を紹介してくれるんです。
『お寺の広報を人に任せるなんて怠慢だ!』は本当?
お寺からの情報発信は住職が責任をもって管理すべきです。ただ、ネットでどこからでも情報収集できる時代、相手が求めるサービス内容は多様なものが多いので、住職もお寺の特徴を的確に伝えないといけません。
墓地分譲に入壇が必要なのであれば、檀家になることの便益を相手に理解してもらう必要がある。また、誰でも広く受け入れる墓地なら多くの人から支持されている理由を伝えないと住職の存在意義が見えなくなる。
では、お寺の思いや特徴をどうやって伝えるか。
ひとつの手段として「お便り」があります。
墓メディアの特徴はネットで情報を見た人が「資料請求」できる点です。
お墓を探す人はエリア内にある複数の墓地資料を取り寄せて比較するのですが、ここでお寺の特徴を伝えることができます。
不特定多数に配るチラシと違って、求めてきた相手が配布する前にわかるのでお寺の思いを伝えやすいです。
私の友人がお墓の資料を墓メディアで取り寄せましたが、住職が筆をとって書いてくれたお便りは石材店からの豪華なパンフレットより温かみがあったので見学を申し込みやすかったと言っていました。
住職がすることは、思いを届ける最初の一歩と見学時での説明で重要なポイントを外さなければ問題ありません。
住職がやらない方がいい仕事もある。
うちの実家は棚経をする檀家寺ですが、葬儀でうちのお寺を知った人にお寺の檀家とは何かを伝えるのは総代さんが代わりに説明してくれていました。
『お盆やお彼岸に法事頼まへんなら、佛心寺の檀家にならんほうがええで』
っていう感じです。
これを住職が一方的に言っちゃうとたちまち評判が悪くなるし、なぜ法事が必要かなどは実際に法事を受けた人が客観的な立場で伝えるほうが伝わりやすいです。
相手の立場もお寺の立場も両方の視点から言えるような、お寺の職員のような人をイメージすればいいと思います。
相手と同じ目線で話せるか
お寺のことを一方的に伝えるだけの営業は残念ですが、墓メディアや葬儀社など集客力のある組織に「お仕事ください」というのもダメな営業です。
お寺やお墓を自由に選べるようになったため、相手も選ぶ理由があります。
相手が求めるものをしっかり聞いてあげて、うちと合致する点を相手に伝えてあげれば、相手はその先のお寺との関係が見えやすくなります。
住職が先頭に立って伝えていくことも重要ですが、相手と同じような立場の人が内容を説明をしてあげるのが有効です。
いまのお寺に必要なのは「現場の棟梁」。
今回はお寺の営業についてお話ししました。
偉そうに語ってしまいましたが、私がテレビ局や広告代理店で営業をしてきたことはお寺の現場と同じ、お寺に何かを求めて来てくれた相手のことを知ることがとても大切だからです。
昨年からお寺の営業代行を、関東以外でもリモートでお手伝いしています。
いまのお寺に必要なのはバズる墓案内やデザインを設計してくれるプロデューサーではなく、業者や問合せ客に応じた対応策を考える「現場の棟梁」のような人材です。
集客できているお寺はどんな強みがあるのか、うちのお寺に相手が求めるものは本当にないのかなど、現場の声を聞いて独自の特徴を伝えること。
石材店や葬儀社には住職の壇務内容を守秘義務含めて書面で伝えれば、このお寺で何ができるのかを彼らの顧客に説明することができます。
お寺にはヒットコンテンツ、いらないです。バズるのも不要。
課題を抱えた人を見つけ、自分たちが確実に提供できることしかしない。
お寺の思いを届ける姿勢を示すことが大切です。