2023年はこんな年でした。
明けましておめでとうございます。
今年も旧年中にお世話になった方々を思いながら2023年を振り返りたいと思います。2023年に立案した新しいプロジェクトをまとめます。
<終活講演事業>
檀信徒向け終活セミナー『お寺で終活相談会』と銘打ち、告知集客・セミナー運営・講演・アンケート集計・レポート作成・アーカイブ制作まですべて当社で実施しました。当社が取材した檀信徒の終活相談事例を紹介する講演内容で、7ヶ寺で実施し、彼岸時期には3ヶ寺で合計120名ほどの方にご参加いただきました。
<映像配信事業>
仏教講座のオンラインセミナー・団体参拝・落慶法要など合計5案件を、撮影・編集・配信させていただきました。特に落慶法要の撮影はインドネシアだったため、当社として初めての海外取材となり印象深く残りました。
<国際教区取材事業>
前年に実施した外国人僧侶インタビューでは英語の翻訳をしました。今回はインドネシア語を現地翻訳者にお願いして、檀信徒インタビューの映像を日本語字幕付きで配信しました。インドネシア・ジャカルタでは旅団行程の撮影、講演会の取材、新寺建立した寺院の紹介動画制作、落慶法要の撮影とダイジェスト動画制作、出勤僧侶の舞台裏取材、日本人墓地の撮影、イスラム教勉強会の中継など複数のプロジェクトを同時並行で進めました。
<ニュースレター事業>
寺報リーフレット事業から派生したサービスで寺報を外注できるサービスです。立場上、住職が聞きにくい話もある檀信徒インタビューや終活相談会の内容をニュースレターとして発行することで、コロナ禍で足が遠くなってしまった檀信徒の方に再び来寺してもらうことを目的としています。今年は5ヶ寺で発行させていただきました。
ニュースレター(顕証寺様)
仏教講座のオンライン中継・アーカイブ配信(遠壽院様)
親と子がお寺で話し合う「お寺で終活相談会」
終活講演事業は寺院広報セミナーで伺った意見をきっかけに始めました。住職の人柄記事パンフレットが檀信徒の方々に好評だったことから、パンフレットを誰に渡したいかと尋ねたところ「自分の子どもに読ませたい」聞かせてくれました。
そこには「家族でお墓の引き継ぎの話になると言い合いになることもある」という檀信徒の経験から、子どもたちにお寺に関心を持ってほしいという願いがありました。
改葬(墓の引越し)が増えているなか、お寺にとってもお墓の引き継ぎは重要な項目となっています。ご住職になぜこれまでお墓を含めた終活セミナーをしなかったのかと尋ねたところ「やったことがない」というだけの理由でした。
それでは池谷が住職の代わりに登壇して、全国の檀信徒を取材した終活相談の事例を紹介しようと始めたのが『お寺で終活相談会』です。
本来の目的は檀信徒のご家族にお寺に関心をもってもらうためですが、最初から終活セミナーに子どもが参加してくれる訳ではありません。そこで、参加者がイベントレポートやアーカイブ配信でご家族に伝えてもらえるよう設計しています。
当社で参加者アンケートを集計したところ、檀信徒がこれまで住職に終活の相談をしなかった理由として「ご住職に不謹慎だと思われたくなかった」という回答が少なくありませんでした。住職に聞いたところ「自分では相談しやすい住職だと思い込んでいた」とお互いの認識にギャップが生じています。
そこで、相談会に参加した方のアンケートをその後住職との個別面談で使ってもらえるようにしました。家族間で話し合っている終活や仏事の現状をメモとして残し、住職では確認できなかった檀信徒のご家族とのやりとりを可視化するようにしています。
また、自ら話題にしにくかった自分の死について、終活相談会をきっかけに家族と話すことができたと参加者から聞かせていただき、2度目の終活相談会を実施させていただく寺院もありました。
お寺で終活相談会(2023年5月実施)
大切な法要をストーリー映像で残す。
日蓮宗の国際布教拠点で新しくお寺ができました。ジャカルタ蓮華寺のエルフィナ妙布さんはご家族の病気克服のために医学と仏教を日本で学び、都内の寺院で修行して僧侶になった女性住職です。
この度、どうやってゼロから新寺建立したのかを取材しました。答えはとてもシンプルで、彼女はただ勤行と来寺者との対話を繰り返していました。その真摯な姿勢に人は集まり、日本から50名ほどの僧侶が法要に参加していました。
これまで多くの法要を見てきましたが、映像で法要を公開することの重要性を感じています。
あまり視聴ニーズはないかもしれませんが、写真だけでは伝わらない空気感を来寺できない人にも知ってもらう広報は必要で、何より一般市民にはできない伝統文化の所作と法要にかける想いを残すのはお寺の財産になると思います。
当社の映像事業ではストーリーで伝えることの重要性を各寺院に説明していますが、そこで大切になるのは来寺した人の声です。同じ時代を生きる人が、いまの仏教に感じた価値を語る声はリアルタイムで共有できた方が有益です。
例えば、ある寺院からの依頼で本山に檀信徒と団体参拝する取材をしましたが、僧侶からすれば本山は行き慣れた場所でも、お坊さんと行く本山参拝ツアーは檀信徒としては醍醐味でもあります。
記録として集合写真と本山の施設を撮っても、その時の記憶は薄れてしまうので、朝の勤行で鳴り響く迫力ある大太鼓や開祖が眠る廟所のピリッとした空気感を映像で残しました。団体参拝とはどんなことをするのかをストーリーボードで描ける当社だからこそ、先回りして檀信徒の表情とコメントを取材することができます。
檀信徒も簡単には取材を受けてくれないので、行程でのコミュニケーションはとても重要です。檀信徒の方々がもしお寺に行けない歳になっても団体参拝や落慶法要に参加したとき「あの頃、お寺でこんな話をしたね」と思い出を家族で思い返してほしいと願って撮影しました。
ジャカルタ蓮華寺落慶法要ダイジェスト
落慶法要に参加した檀信徒インタビュー
ニュースレターは家族に想いを伝えるきっかけ。
寺報の作成代行サービスは、住職に電話取材した内容の文字起こしをお手伝いするものでした。しかし、読者である檀信徒からは行事案内や仏教の言葉解説など寺報の内容自体にあまり関心がなかったことがわかりました。
檀信徒は「他の檀信徒さんがお寺の向き合い方についてご家族とどんな話をしているのか」を知りたいとの声が多く、いまのお寺の現状を知りたいというニーズは終活相談会と同じだと感じました。
取材した寺院のご住職も「檀信徒とは長い付き合いで変化がないからこそ、現状を振り返り伝え残す必要がある」と、檀信徒インタビューと寺報への掲載へ賛同してくれました。
鎌倉・顕証寺の婦人会インタビューでは、取材した3名の方々にご家族のことを聞いたところ「ご住職が仏事に関して家族と話すきっかけとして、今想っていることを誰かに宛てた手紙として書いてみようと提案してくれた」とお聞きしました。
そうすると自分自身でも普段仏事について話すことがなかったのに、お墓や葬儀の希望など家族に伝えたいことが出てきたとのことでした。
このようなお寺での取り組みを次の世代へ伝えるきっかけとしてお寺のニュースレターを作成しています。あるお寺では終活レポートをご家族に伝えるツールとして、檀信徒や婦人会では仲間同士で仏事を伝え合うツールとしてお使いいただいています。
顕証寺婦人会様インタビュー
2023年の事業を振り返りましたが、かなり体力とコストを使った1年でした。ただ、それでも歯を食いしばって頑張れたのは父と母に恩返しをしたい想いがあったからです。
仏事に真面目に取り組む父とコミュニケーションが得意な母で成り立っていたお寺ですが、父も母が亡くなってから人に伝えることの重要性に気付いたようです。母はいまのお寺の現状を人に伝えるのが上手な人でした。
私がマスコミに勤めて学んだことのひとつに、ブランディングがあります。例えば実例のない実績紹介や匿名のユーザーレビューは厳禁でした。顧客や視聴者から見透かされ逆にブランドを毀損するからです。
残念なことに寺院や石材店の広告やブログはこれが多く、実績の実名事例が少ない事業が多く見受けられます。当社では資料請求寺院に寺院広報の実例を紹介していますが、実際に会ってご住職にサービス内容を説明する際は伝え方の効果検証データを実例で紹介しています。
コロナが明け、あらためてお寺には集客力がそもそもあることを実感しています。逆に檀信徒が来寺しないと嘆く寺院は、いまのお寺の現状を伝えきれていない可能性があります。
いま住職に求められるのは愚直に勤行すること、そして来寺した人全員と対話することだと思います。今年もいまのお寺の現状を多くの人に知ってもらうお手伝いをさせていただきます。合掌
令和6年1月1日
株式会社唯
池谷正明
株式会社唯 2023年のプロジェクト