大源寺は、江戸初期に創建された由緒あるお寺ですが、現在は檀家数の少ない小さな寺院です。幾度も災害に見舞われながらも、地域の人々の信仰によって受け継がれてきました。現在は第12世・桑海一寛住職が、その歩みを継いでいます。
桑海住職が住職となったのは20歳の頃。9歳で父を、その後すぐに祖父を亡くした彼は、子どもの頃から仏事に参加し、自然と使命感を抱くようになりました。
大学進学を経て一時は地元を離れましたが、ある葬儀をきっかけに道場での修行を志し、住職として寺に戻られました。
その後、老朽化した本堂の修復にも尽力。地域を回って寄付を募りながら、檀家や地元の方々とともにお寺を再建しました。
かつては役所勤務もされるなど、地域社会とのつながりを大切にしながらお寺を守っています。
特に注目すべきは、樹木葬「曠然苑(こうねんえん)」の開設です。
境内の美しい庭を守りながら、誰でも気軽に訪れることができるお墓として、多くの方に親しまれています。
入檀を必要としない開かれた形式により、檀家以外の方々も自然に参拝され、交流が生まれています。
「伝統は守るべきだが、執着は変えていかなければならない」。桑海住職のこの言葉には、現代の仏教と社会のあり方への問いかけが込められています。
檀家制度に頼りきらず、新たな関わり方を模索する姿勢は、地域に根ざしているからこそ実現できる、やさしく、しなやかなお寺です。
大源寺では、樹木葬をきっかけに新しい人のつながりが生まれつつあります。
終活や葬儀に関するイベントも今後予定されており、「共につくるお寺」として歩み始めています。
これからのお寺との関わり方に関心のある方は、ぜひ一度、大源寺を訪れてみてください。
お墓の見学が目的でなくとも、美しく整えられた境内の景観を眺めながら静かに過ごす時間は、きっと心を落ち着けてくれるはずです。
規模の小さなお寺だからこそ、形式にとらわれず人とのつながりを育むことができるお寺だと思います。