武久住職は、重い病で友人を亡くし、自身も生死をさまよう経験をしたきっかけから、人間の命について深く考えたいと僧侶の道を志しました。
横浜の寺院で小僧として修行に励み、何事にも真摯に取り組む先輩僧侶から大きな影響を受け、多くを学んだと振り返ります。
その後、武久住職は円覚寺本山の宗務本所庶務部長を務めるなど、多岐にわたる経験しました。
辞令や書状の作成に加え、国宝の拝観準備、信徒会館の建設事業など、幅広い「何でも屋」としての役割を担ったのです。
この円覚寺での20年以上にわたる経験は、住職としてお寺を運営していくための確かな基礎になったと武久住職は振り返ります。
清雲寺には、国指定重要文化財の「瀧見観音坐像(たきみかんのんざぞう)」をはじめ、貴重な仏像が安置されています。瀧見観音坐像は、菩薩が膝を立てて岩の上にくつろぐユニークな遊戯坐像(ゆげざぞう)で、鎌倉時代の中国・宋より渡来したものです。
取材した寺院の中でも極めて珍しいこの仏像は、多くの美術展にも出品され、文化庁や行政との折衝を都度行っているとのこと。
他にも神奈川県の指定重要文化財である毘沙門天像があり、武久住職はこれらの大切な文化財を未来へ継承するため、寺に戻ってから火災や防犯対策の整備と更新を進められています。
当社で取材した寺院では、貴重な仏像は閉扉して非公開にする「秘仏」が多い中、武久住職は「ご先祖さまの想いが子孫へと伝わるお寺でありたい」と願い、ご本尊を檀信徒の方々に公開しています。
お墓の世代交代が進む現代において、仏事の意味を伝える大切さを強く感じている住職は、ご先祖様をお守りするお寺へと人々が心を寄せてくれることを願っています。年に4回の檀家回りや、お正月には破魔矢を配布するなど、積極的に活動されています。
特に、毎年8月6日に行われる「おせがき法要」は檀信徒の方々が200人以上参加する清雲寺で最も大きな行事です。
先祖供養とともに、ご本尊さまの拝観を楽しみにお越しになる方も多いそうです。足の不自由な高齢者の方や、近くの市営墓地で先祖供養を希望される檀家の方々には、お塔婆と共に、今回制作させていただいたパンフレットを通じてご本尊のお顔をお届けするなど、細やかな心遣いをされています。
現在は、ご子息も副住職となり、親子で地域に根ざしたお寺づくりを共に進めています。武久住職親子の温かい想いが息づく清雲寺へ、ぜひ一度足を運んでみてください。