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【実績紹介】終活は「話すこと」から始めればいい/お寺で終活相談会

2025/12/2

今年も春秋のお彼岸とお盆に「終活相談会」の講師をさせていただきました。


これまで16ヶ寺、450人もの参加者の方々にお話しする機会に恵まれ、あらためて気づいたことがあります。


それは「終活って、自分がしたいことを話すことから始めればいいんだ」ということです。



エンディングノートに筆が進まない理由。

 
 

終活カウンセラーが高齢者の方々に「エンディングノートを書きましょう」と推奨することに、どこか違和感を覚えていました。


実際、高齢者が3割を超える横須賀市が10年前から始めたエンディングプラン・サポート事業「わたしの終活登録」という無料の終活支援サービスがあります。


登録者は、わずか1200人程度。高齢者人口12万人に対して、10年間で1%ほどしか登録していないのです。


なぜでしょうか?それは「終活を高齢者にさせる」という構造上の問題があるからだと思います。



お寺には「話し合う文化」があった。

 

自坊では、門徒(檀家)の皆さんが自然とお寺に集まって、自分のしたい終活を話す文化がありました。


「うちの息子はこう言っててね」

「私はこんな葬儀がいいと思うの」


そんな何気ない会話が、日常的に交わされていたのです。しかし今、お寺は閉じた空間になってしまいました。


仏事の時だけ訪れる場所。住職と話す機会もほとんどない。その結果、高齢者の方々は一人で終活と向き合わざるを得なくなっていると感じます。



参加者の声から見えてきたこと。

 

私が登壇した終活相談会で、行政の相談窓口にお勤めの方がこう話してくださいました。

 

「本当に高齢者の方が多く、ご家族ともお付き合いもなく、お一人で人生の最期までを考えているみたいなご相談が非常に多いです。


本当に本当に不安なんだと思うんです。その自分が行く先を誰も相談できない、お金があるわけでもないとかっていうところで、必ずそういった相談があります」。

 

 

 

また、横浜市磯子区・金蔵院の眞田有快住職はこう語ってくださいました。


「やはり生まれて亡くなるまでの人生を皆さん一生懸命生きてこられて、必死で生きてこられたわけですから。自分は胸を張って生きてきたんだから、最期ぐらいちゃんと来てくれというだけの権利があると思います」。

 

 

この言葉を聞いて、終活とは、決して「家族のため」だけではない。自分自身が胸を張って生きてきた人生の総仕上げなのだと気づきました。

 

 

 

「ひとりにさせない終活」を目指して。

 

私の理想は「終活を一人でさせないこと」です。

 

そのためにまず必要なのは、みんなで話し合う機会を作ること。エンディングノートを書く前に、「自分のしたいこと」を誰かに話す機会を持つことです。

 

ある僧侶仲間から「『カンタン終活!』みたいに、もっと家族でも参加しやすい形にしたら?」という感想をいただきました。

 

はい、それが理想です。でも現状では、いきなり家族を連れてくるのは難しい。なぜなら、家族にとって親の死にはそれぞれに文脈があり、エンディングノートに書き切れないことがたくさんあるからです。

 

だからこそ、まずは「お寺で話しましょう」と住職が伝え続けること。各寺で相談会を実施し、毎年住職が個別相談を呼びかける。

 

そして浸透してきたら定期的な茶話会を開催して、お寺を開放していく。そんな地道な積み重ねが必要です。

実は、お坊さんが一番相談しやすい?

 

取材した50代男性の言葉が印象的でした。当初は「お寺を必要としてません。別に住職と会う必要ってある?」と話していた彼が、葬儀の相談相手としてお坊さんが話しやすかったという檀家の話を聞いて、こう言ったのです。


「たしかに葬儀屋さんはいまチェーン店化してるので、コロコロと担当が変わる葬儀会社は相談しにくいかも。そうなってくると、お坊さんが一番相談しやすいかも。要するに住職は社長みたいなものですから、家族にとってずっと変わらず相談できますね」


住職は、いつか必ず必要になる終活の相談相手なのです。それをご家族に知ってもらうためにも、終活相談会のような場が大切なのだとあらためて感じました。

 

 

あなたが本当に残し伝えたいたいものは?

 
 

終活は何から始めればいいかなど考えず、まずは「自分がどう生きてきたか」「これからどう過ごしたいか」を誰かに話してみることから始めればいいのです。

 

ぜひ一度、お寺に足を運んでみてください。住職になんでも質問してみてください。

 

例えば「他の方はどんな相談をされているんですか?」と聞いてみるのもいいでしょう。きっと、思っていたより気軽に話せることに気づくはずです。

 

お寺はもともと、地域の人々が集い、語らう場所でした。終活も、ひとりで抱え込むのではなく、みんなで話し合う。そんな当たり前の文化を、もう一度取り戻していきたい。それが、これまで450人の方々に伝えてきた私の願いです。

 

 

お寺で終活相談会の実施報告はこちら:
https://yuiinc.com/lp/preparation/

【登録不要でダウンロード】『お寺で終活相談会』 実施報告とアンケート結果

この度、小生が講師をさせていただいた「お寺で終活相談会」の実施報告とご参加いただいた檀信徒様からのアンケート結果を共有させていただきます。

 

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「盆や彼岸に多くの人が墓参するのに、なぜ寺離れと言われているの?」「小さなお寺でも住職が忙しい理由」など、実際に取材した寺院の事例をもとに、寺院運営のリアルな課題や気づきを発信しています。

 

住職の皆様はもちろん、寺院に関心をお持ちの方もぜひご覧ください。

 

先月の投稿ピックアップ|11月20日の投稿より:


住職の後継者不足が深刻化し、地方の宗門大学では定員割れが続く。

古くから住職が葬儀や法事の案内を避け、広報を拒む慣例が寺院経営を弱らせ、寺族や後継者も離れつつある。

檀家側も「寺の姿が見えない」ことを理由に離檀が進む構造が浮き彫りになっている。

見える寺であることが、未来をつなぐ唯一の道になってきた。

https://www.threads.com/@masaike/post/DRQf-EbEzHv

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